2021年、読んでよかった本の上位になるだろう。
日本の現実、世界における日本の位置づけ。
日本人に警鐘を鳴らしてくれた本といっても過言ではない。
読了直後、そんな気持ちだ。
私たちは今、何をすべきなのか。
指をくわえて、国や社会や組織が決めることをただ眺めているだけなのか。
安いニッポン「価格」が示す停滞
<本書の目次>
はじめに
第1章:ディズニーもダイソーも世界最安値水準
第2章:年収1400万円は 低所得?
第3章:「買われる」ニッポン
第4章:安いニッポンの未来
あとがき
読んだきっかけ
6割くらいはこの方の動画を見て本を読んでいる気がする(笑)
中田敦彦のYouTube大学 - NAKATA UNIVERSITY
動画を視聴したときに、これは読まなければいけない、と思った。
読了した今、「日本人よ、現実を見よ。」と思っている。
「ここが素晴らしいニッポン」みたいなメディアを見て、自惚れている場合ではない。
著者の中藤玲(なかふじ・れい)さんは、1987年生まれ。
というと、今年34歳。
愛媛新聞社編集局社会部 → 日本経済新聞社編集局企業報道部
という経歴。
新聞社取材の本気度がよくわかる。
得たもの
もしかすると、今も思っている人が多くいるかもしれない一言。
「東京は土地も何でも世界一高い」と言われたのも、今や昔。
メディアで報道されているとおり、日本は「世界に誇るものづくりNIPPON!」みたいな感覚をもっていた。
ところが、本書では現実をつきつけてきた。
賃金や物価について、このように述べている。
今の日本は、「我慢して貯める」か「じり貧で使う」しかなくなってしまっている。「失われた30年」とまで言われるほど日本が立ち止まっていた間に、世界はどんどん成長し、日本のポジションも大きく変わってしまっていたのだ。
そう、世界における日本のポジションがすっかり変わってしまっていた。
日本は先進国なのか?とまで今思っている。
それは、ファクトフルネスを読んだときと似たような感覚。
日本の賃金が安値のまま数十年が過ぎ、それによって家計の支出も減る。
デフレが続くリスクをこれでもかと述べられていた。
世界を見ると日本の低所得低賃金の事実に衝撃を受ける。
米住宅都市開発省の2020年最新版では、
8万7000ドル(約900万円)は「非常に低い所得」、5万2200ドル(約540万円)は「極めて低い所得」と位置付けている。
え?
じゃあ「極めて低い所得」以下は何?
ちがう、そんなことはどうでもいい。
日本人は、低所得低賃金で生活している人がほとんどなんだよっていう実態。
結局のところ、「低所得低賃金」問題を早急に解決したほうがいいと思った。
なぜ低賃金であり続けるのがよくないのかという理由はぜひぜひ本書をお読みいただきたい。
「日本の安さ」は、所得だけではなかった。
例えば、Amazonプライム年会費。
国 | Amazonプライム年会費 |
---|---|
日本 | 4,900円 |
アメリカ | 119ドル(約12,300円) |
イギリス | 79ポンド(約11,200円) |
フランス | 49ユーロ(約6,200円) |
ドイツ | 69ポンド(約8,700円) |
昨年値上がりしたが、世界から見ると日本はダントツに安い。
それでも日本では、この値上がりに対してブーイングがおきる。
他にも、日本のディズニーランド入園料は、世界で最安値。
ダイソーの商品が100円で買えるのは、日本だけ。
などなど。
『物価』とは、さまざまな商品やサービスの値段をある一定の方法で統合した平均値。
経済全体での物価の一般水準のこと。
日本は、この物価水準が低価格だということ。
一消費者として見たら、「物価が安い」=「家計が助かる」と思うかもしれない。
だけど供給者側からすると、モノやサービスが売れても単価が安ければ利益率も低い。
となると、そこで働いている従業員(労働者)の賃金も上がるわけがない。
物価高+所得高
物価低+所得低
どちらが幸福か?
こんなことが第2章までで述べられていた。
日本の現状は、ショッキングなことばかりだった。
『物価低+所得低』の日本に、『物価高+所得高』の外国人がきたらどう思うか?
「made in Japan、コスパよすぎ!!!」
「その技術、買うよー」となり、なんなら「うちに来ちゃいなよ」、「この際、土地ごと買っちゃう!」となるのは必然だ。
はい、技術と人材は、海外流出。
日本人が手を出せない(買えない)土地は、外国人に買われ、外国人が住み、その一帯は物価が上がる。
現地の日本人は、高すぎる物価により、何も買えない、となる。
一方日本国内の企業では、年功序列で勤続〇十年の中高年たちが高収入(といっても世界から見ると、低所得者層)で、新卒者は一律低賃金だ。
もっというと、大学も。
企業だけでなく、人材を育成すべき大学にも課題は多い。多くの大学では、AI人材を育てられる教員が不足しているのだ。若手研究者が、待遇の良い企業の研究所などに移る動きが目立つことが理由だ。研究者の間では「人材育成を担当できる大学教員は全国で100人程度」との見方もある。裏を返せば、日本の大学はそれだけ報酬が低いということである。大学は海外から教員を招く動きを強める。
これを見た時に、江戸~幕末を思い出した。
鎖国していた日本は、医療や軍事に関して、技術の進化が著しく遅かった。
西洋の技術は、遥かに進んでいたので、日本からごくごく限られた超エリート数名が海外に留学し、技術を習得した日本人は、英語や蘭語、西洋の考え方、技術を当時の日本人に伝えていったのだ。
似たようなことを160~170年くらい前の日本人はやっているんだよね。
それでも当時は、留学に対して莫大な金額を費やした。
そうだよね、今後の日本を背負う留学だもの。
当時の日本人は、日本の行く末を真剣に考えていた。
混乱して、たくさんの命が失われた。
いくつも、いくつもの危機を乗り越えてきた。
学び、知識を得た日本人は高度成長期を迎え、国の発展は一気に加速した。
それから数十年。
現代に生きる私たち日本人は、AIについてどれだけ理解しているだろうか。
英語や、海外の言葉がわかる日本人がどれだけいるだろうか。
その技術や語学力をもった日本人は、日本の企業で働いているのだろうか。
続く低所得。
所得が低いために、少しでも安い商品を買う。
すると、企業も利益が低い。
高品質の技術/サービスの提供は、研究費、開発費、研修費などで、コストがかかるので、品質の維持さえ難しくなってくる。
これから先は、AIによって、人員削減が予想できる。
ただでさえ、低い所得層の人たちが職を失う。
学び続け、自分を作り、海外へ出て行く人たち、という構図はまんざらでもないと思った。
どう活かすか
どうしてニッポンは「安く」なってしまったのか。
世界経済がどのようにまわっているのか、もっと知る必要があると思った。
それは、資産運用にもつながる。
コロナ、自然災害、天災、人的災害。
未来に向けて、今何をどうしたらいいのか、もっともっと真剣に考えていかなければいけないと思った。
子どもたちに言いたい。
英語(他外国語)を学ぼう。
プログラミングを学ぼう。
お金を学ぼう。
そして大人たち。
現実を知ろう。
目の前の生活費も大事。
だけど、歳を重ね、迎える未来のことも知ろう。
どうやって?
本を読もう。
歴史を知ろう。
考えよう。
未来に備えよう。
誰かが、何かをしてくれるのを待つ、のではなくて、その道は自分で切り開いていくものなのではないかと思った。
当然だけど、その道は、そんなに簡単ではないことも承知だ。
覚悟をもって人生を歩んでいく。
そう思った。
書きながら、当然自分へのメッセージでもある。
まとめ
笑っていたい。
楽しく生きたい。
穏やかな日々を送りたい。
気軽に旅をしたい。
その願望は、とても大事だと思っている。
2021年に入り、さまざまな企業の中の人たちと接触することで、現状を少しだけ理解してきたところだった。
”今”を乗り越えることに必死な企業。
”将来”を見据えて計画している企業。
”世界”と闘っていこうとしている企業。
日本国内だけなのか、世界に向けてなのかで、その規模は随分変わってくる。
共通しているのは、みんな必死だってこと。
真剣に取り組んでいるのは当然だ。
正解か間違っているのか、誰もわからない。
けど、見えないものに向かって、懸命に生きている。
これからは個人単位でさらなる発展を遂げていかなければいけないと思った。
これまでもこれからも低所得のまま、日本企業で働き続けていいのか、と思った。
本書は、そんなことを気づかせてくれた、かなりの良本だった。