右岸/辻 仁成

2012/03/08

t f B! P L

あぁぁぁぁぁ、終わってしまった。

読み終えたのはいいけれど、

なんだかこの8日間があっという間だったし、

夢中になっていたので、

もう少しこの楽しみを続けていたかった。


*************

1960年、福岡。

九はやくざ者の父とその愛人の子として生まれる。

祖父母に預けられた彼は、隣に引越してきた同い年の茉莉とその兄、

惣一郎と共に育つ。

奔放で天真爛漫な茉莉に想いを寄せ、

聡明で男気のある惣一郎を実の兄のように慕う九。

しかし、突如会得した不思議な力と、

惣一郎の死が運命を大きく変えてゆく。

生涯にわたる愛をテーマに江國香織との共作に挑んだ一大長編。

*************


「左岸」は、茉莉が主人公だったのに対し、

「右岸」は、幼馴染みの九の物語。


あまりに無垢で純粋な九の一言一言に、

胸をつつかれる気持ちで読み続けた。

まだ始まって間もないというのに、

私は涙が流れてきてしまった。

例えば、九が小学生時代のこんな台詞。


「肩車ばしてもらったと。

家の前まで送ってくれたっちゃけど、

帰っていったっちゃん。

家で遊ぼうって言ったっちゃけど、帰ってしまったと。

泊まっていってほしかった。

父さんが寝る布団ならぼくのを貸してもいいよって言ったと。

でも、父さんは帰っていったと。

ねえ、なんで父さんは帰って行くと。

どこへ行ったと。

ここが父さんの家やないと?

一緒に暮らしたか。」


父を慕う子の当たり前の光景。

大人の都合で父と一緒に住むことができない九の、

真っ直ぐな疑問を遠慮なくぶつけてくるところが、

たまらなかった。


その後、成長していくにつれ、

男の子ってこうなのか。と早送りして読みたくなるような文面が続いた。

さらには、九の『不思議な力』が前面に出てくる。

ここは、もしかすると、敬遠したくなるような場面の連続の人も多かったかもしれない。

だけど私は、キライではなかった。

すっかり大人になった九が歩んだ、行った先での出来事も、

私は理解できる。


あえて言うとするならば、

九は、その辺にいる青年だったら

もっとイメージしやすかったかな。

私が知らないだけで、

実はその辺にも九のような青年がいるのかもしれない。。。なんて。

多くの人から学んだ出来事は、

九を通して、辻さんが言いたいことなんだろな、と思いながら、

あっという間に私の歳を越えて行っちゃった九。


ラストの江國さんから辻さんへ宛てた【手紙】で、

私はまた涙が出てきてしまった。

本作中にもたくさん登場した「手紙」。

実は「左岸」にも登場していて、

あの時の!

っと物語が繋がるのがよかった。


「冷静と情熱のあいだ」から13年。

自分もそれだけ歳を重ねてからの共作再び。

こんなに素敵な二人の人生を早送りで覗かせてもらった気分。

そこには、言葉にするのが困難なくらい、

読みながら、

考えさせられることがあったし、

共感するところがあったし、

学ぶところがあった。


読めてよかった。

また少し間をあけて、何年後かに読んでみたいな。





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