あぁぁぁぁぁ、終わってしまった。
読み終えたのはいいけれど、
なんだかこの8日間があっという間だったし、
夢中になっていたので、
もう少しこの楽しみを続けていたかった。
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1960年、福岡。
九はやくざ者の父とその愛人の子として生まれる。
祖父母に預けられた彼は、隣に引越してきた同い年の茉莉とその兄、
惣一郎と共に育つ。
奔放で天真爛漫な茉莉に想いを寄せ、
聡明で男気のある惣一郎を実の兄のように慕う九。
しかし、突如会得した不思議な力と、
惣一郎の死が運命を大きく変えてゆく。
生涯にわたる愛をテーマに江國香織との共作に挑んだ一大長編。
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「左岸」は、茉莉が主人公だったのに対し、
「右岸」は、幼馴染みの九の物語。
あまりに無垢で純粋な九の一言一言に、
胸をつつかれる気持ちで読み続けた。
まだ始まって間もないというのに、
私は涙が流れてきてしまった。
例えば、九が小学生時代のこんな台詞。
「肩車ばしてもらったと。
家の前まで送ってくれたっちゃけど、
帰っていったっちゃん。
家で遊ぼうって言ったっちゃけど、帰ってしまったと。
泊まっていってほしかった。
父さんが寝る布団ならぼくのを貸してもいいよって言ったと。
でも、父さんは帰っていったと。
ねえ、なんで父さんは帰って行くと。
どこへ行ったと。
ここが父さんの家やないと?
一緒に暮らしたか。」
父を慕う子の当たり前の光景。
大人の都合で父と一緒に住むことができない九の、
真っ直ぐな疑問を遠慮なくぶつけてくるところが、
たまらなかった。
その後、成長していくにつれ、
男の子ってこうなのか。と早送りして読みたくなるような文面が続いた。
さらには、九の『不思議な力』が前面に出てくる。
ここは、もしかすると、敬遠したくなるような場面の連続の人も多かったかもしれない。
だけど私は、キライではなかった。
すっかり大人になった九が歩んだ、行った先での出来事も、
私は理解できる。
あえて言うとするならば、
九は、その辺にいる青年だったら
もっとイメージしやすかったかな。
私が知らないだけで、
実はその辺にも九のような青年がいるのかもしれない。。。なんて。
多くの人から学んだ出来事は、
九を通して、辻さんが言いたいことなんだろな、と思いながら、
あっという間に私の歳を越えて行っちゃった九。
ラストの江國さんから辻さんへ宛てた【手紙】で、
私はまた涙が出てきてしまった。
本作中にもたくさん登場した「手紙」。
実は「左岸」にも登場していて、
あの時の!
っと物語が繋がるのがよかった。
「冷静と情熱のあいだ」から13年。
自分もそれだけ歳を重ねてからの共作再び。
こんなに素敵な二人の人生を早送りで覗かせてもらった気分。
そこには、言葉にするのが困難なくらい、
読みながら、
考えさせられることがあったし、
共感するところがあったし、
学ぶところがあった。
読めてよかった。
また少し間をあけて、何年後かに読んでみたいな。