数々のスクープを物してきた敏腕編集長、カワバタ。
大物政治家Nのスキャンダルを追う彼の前に現われた奇妙なグラビアの女。
彼女を抱いた日から、人生は本来の軌道を外れて転がり出す。
不敵なまでの強引さと唐突さで物語に差し挟まれる数々の引用。
小説が真理に近づく限界を極めた、第22回山本周五郎賞受賞作。
【この胸に深々と突き刺さる矢を抜け】
久々に、あっという間の読了。
いや読了と言っても、この本は、再読必須かもしれない。
主人公カワバタが語る数々の引用文献は、
恐らく本物であり、
読みながら、
これは、著者白石さんの訴えでもあるのではないかとも思った。
世界貧困問題。
米国と日本と世界が今後どう関わっていくべきなのか。
カワバタ本人は、胃ガンであった。
数年前に死んだ息子が時々現われたりもする。
「生」に対する考え方もリアルに感じた。
現実の世界が抱える問題が、明瞭に描かれているからこそ、
物語により引き込まれていったのではないかと自己分析した。
数々の引用文献の中で、
特に興味を抱いたのが、立花隆著【宇宙からの帰還】。
下巻P.26からのくだり。
amazon検索してみても、レビューを読んでみても、
かなり興味深々。
ということで、購入することにした。
それほど、リアリティある内容の本作。
考えさせられることも多々あり。
今ここで、こうすればいいじゃないかなどと、
私みたいなのが、言える立場じゃない。
とともに、答えがわからないというのが本音かもしれない。
白石さんの本は幾つか読んできたが、本作は、今までと別物。
男と女。
夫婦。
家族。
仕事。
生と死。
世界が抱える問題も、
誰もが抱える問題も、
リアルに描かれていたのが「=面白い」という感想になったのかなと思う。
知らない現実を知るという意味では、勉強になった。