この胸に深々と突き刺さる矢を抜け / 白石一文

2012/01/22

t f B! P L

数々のスクープを物してきた敏腕編集長、カワバタ。
大物政治家Nのスキャンダルを追う彼の前に現われた奇妙なグラビアの女。
彼女を抱いた日から、人生は本来の軌道を外れて転がり出す。
不敵なまでの強引さと唐突さで物語に差し挟まれる数々の引用。
小説が真理に近づく限界を極めた、第22回山本周五郎賞受賞作。


【この胸に深々と突き刺さる矢を抜け】

久々に、あっという間の読了。

いや読了と言っても、この本は、再読必須かもしれない。

主人公カワバタが語る数々の引用文献は、

恐らく本物であり、

読みながら、

これは、著者白石さんの訴えでもあるのではないかとも思った。

世界貧困問題。

米国と日本と世界が今後どう関わっていくべきなのか。

カワバタ本人は、胃ガンであった。

数年前に死んだ息子が時々現われたりもする。

「生」に対する考え方もリアルに感じた。

現実の世界が抱える問題が、明瞭に描かれているからこそ、

物語により引き込まれていったのではないかと自己分析した。

数々の引用文献の中で、

特に興味を抱いたのが、立花隆著【宇宙からの帰還】。

下巻P.26からのくだり。

amazon検索してみても、レビューを読んでみても、

かなり興味深々。

ということで、購入することにした。

それほど、リアリティある内容の本作。

考えさせられることも多々あり。

今ここで、こうすればいいじゃないかなどと、

私みたいなのが、言える立場じゃない。

とともに、答えがわからないというのが本音かもしれない。

白石さんの本は幾つか読んできたが、本作は、今までと別物。

男と女。

夫婦。

家族。

仕事。

生と死。

世界が抱える問題も、

誰もが抱える問題も、

リアルに描かれていたのが「=面白い」という感想になったのかなと思う。

知らない現実を知るという意味では、勉強になった。


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